「居酒屋を開きたい。でも、厨房に何をどのくらい揃えればいいのか分からない」

居酒屋の厨房は、カフェやラーメン店と違い「何でも出せる」汎用性が求められます。刺身、焼き物、揚げ物、煮物、サラダ。メニューの幅が広い分、必要な機器の種類も多くなりがちです。そして「あれもこれも」と揃えた結果、初期費用が膨らんで開業前に資金がショートする、というのは本当によくある失敗パターンです。

この記事では、厨房の実務知見をもとに、居酒屋開業に最低限必要な厨房機器の一覧それぞれの費用相場、そしてメニュー構成に応じた機器の取捨選択の考え方を、できるだけ具体的にお伝えします。

読み終えるころには、「自分の居酒屋に何が、いくら必要で、何は後回しでいいのか」が整理できているはずです。

この記事でわかること

  • 居酒屋開業に最低限必要な厨房機器の一覧と費用相場
  • 機器ごとの「失敗しない選び方」のプロ視点
  • メニュー構成別に「いる機器・いらない機器」を判断する考え方
  • 新品・中古・リースの使い分け
  • 20坪・30席モデルの費用シミュレーション



居酒屋に最低限必要な厨房機器リスト【一覧表】

まず全体像から。下の表が、刺身・焼き物・揚げ物を提供する一般的な居酒屋(20坪・30席前後)を想定した「最低限そろえたい厨房機器」の一覧です。価格帯は2026年6月時点の楽天市場・新品の実勢を目安にしています。

機器 役割 新品価格の目安 優先度
ガスレンジ(ガステーブル) 炒め・煮物・焼き物の火力源 約6万〜15万円 ★★★ 必須
ガスフライヤー 唐揚げ・天ぷら・ポテトなど揚げ物全般 卓上型 約5万〜10万円/据置型 約15万〜34万円 ★★★ 必須
焼き物器(グリラー) 焼き鳥・焼き魚・串焼きなど ガス式 約2万〜5万円/電気式 約10万〜30万円 ★★☆ メニュー次第
コールドテーブル(台下冷蔵庫) 食材の保管+作業台。調理動線の中心 約12万〜25万円 ★★★ 必須
業務用冷蔵庫(縦型) 食材の大量ストック 約15万〜30万円 ★★★ 必須
業務用冷凍庫(縦型) 冷凍食材・仕込み品の保管 約15万〜30万円 ★★★ 必須
製氷機 ドリンク用の氷。居酒屋では消費量大 約20万〜28万円(35kg)/約40万〜45万円(75kg) ★★★ 必須
食器洗浄機 大量の皿・グラスの回転を支える 約15万〜30万円 ★★★ 必須
作業台・シンク 仕込み・盛り付け・洗浄 約2万〜8万円 ★★★ 必須
ビールサーバー 生ビール提供。居酒屋の売上の柱 メーカー貸与が一般的(後述) ★★★ 必須

カフェやラーメン店と大きく違うのは、冷蔵庫と冷凍庫の両方が必要な点と、フライヤー・グリラーなど「加熱調理機器」の種類が多い点です。ただし、すべてを新品で揃える必要はありません。使い分けの判断は後半で解説します。



機器ごとの選び方とプロの視点

① ガスレンジ(ガステーブル)|居酒屋の火力の基本

煮物、炒め物、鍋物など、居酒屋メニューの大半はこのガスレンジで調理します。家庭用と違い、業務用は火力が桁違いに強く、長時間の連続使用にも耐えます。

選び方のポイント

  • 口数は最低2口:1口で煮込み、もう1口で炒め物、という同時調理が前提。メニューが多い店は3口以上を。
  • オーブン付きが便利:ガスレンジの下にオーブンが付いたモデルなら、グラタンや焼き物にも使え、1台で2役です。
  • 幅のサイズに注意:900mm幅が標準的ですが、厨房が狭い場合は600mm幅の卓上型も選択肢。

マルゼンやタニコーの2口ガスレンジで約6万〜15万円が目安です。

② ガスフライヤー|居酒屋の「稼ぎ頭」を支える

唐揚げ、ポテトフライ、天ぷら。居酒屋の人気メニューの多くは揚げ物です。揚げ物は原価率が低く利益率が高いため、居酒屋にとっての「稼ぎ頭」。フライヤーの選び方は利益に直結します。

タイプ別の特徴

  • 卓上型:油量7〜13L程度。小規模店や揚げ物がサブメニューの店向け。約5万〜10万円。
  • 据置型(スタンダードタイプ):油量15〜23L。揚げ物が主力の店向け。油交換がコック式で楽。約15万〜34万円。

選び方のポイント

  • 油量=同時調理量:ピーク時に唐揚げとポテトを同時に揚げたいなら、2槽式か、フライヤーを2台設置。
  • 据置型のほうが油交換が圧倒的に楽:卓上型は鍋ごと持ち上げて油を捨てるため、重くて火傷のリスクもあります。スペースが許すなら据置型を強くおすすめします。

③ 焼き物器(グリラー)|焼き鳥・串焼きを出すなら

焼き鳥や串焼きをメニューの柱にするなら、専用の焼き物器が必要です。ただし、焼き鳥がメインでない居酒屋なら、ガスレンジの魚焼きグリルやオーブンで代用できるため、最初から必ず必要な機器ではありません

タイプ別の特徴

  • ガス式焼き鳥器:3本バーナータイプで約2万〜5万円と安価。場所も取らない。焼き鳥を「出す」程度ならこれで十分。
  • 電気式グリラー:ヒゴグリラーなどの本格機。均一な焼き上がりで大量調理に向く。約10万〜30万円。焼き鳥専門に近い居酒屋向け。
  • 炭火焼き台:炭の風味が売り。ただし換気設備の強化が必要で、内装工事費が上がるため要注意。

④ 冷蔵庫・冷凍庫|居酒屋は「両方必要」

居酒屋は食材の種類が多く、刺身のネタ(冷蔵)、冷凍の揚げ物ストック(冷凍)、仕込み済みの煮物(冷蔵)など、冷蔵と冷凍の両方を大量に使います。カフェのように冷蔵庫1台で済む業態ではありません。

選び方のポイント

  • 縦型の冷蔵庫と冷凍庫を各1台が基本:冷蔵・冷凍兼用(1台で半分ずつ)もありますが、居酒屋の食材量では容量不足になりがちです。最初から分けて購入するのが無難。
  • コールドテーブルも加えて3台体制:コールドテーブルは作業台兼用で手元に置く用。縦型は食材のストック用。この使い分けが回転の鍵です。

ホシザキやパナソニックの縦型2ドアで、冷蔵庫・冷凍庫それぞれ約15万〜30万円が目安です。

⑤ 製氷機|居酒屋は「最も氷を使う業態」

ハイボール、サワー、ウーロンハイ、冷水。居酒屋はドリンクのほぼ全てに氷を使います。カフェやラーメン店の比ではない消費量で、製氷機の能力不足は売上に直結します。

能力の目安

  • 30席以下:日産35kgクラスでギリギリ。夏場を考えると45kgが安心。
  • 30席以上:日産75kgクラスを推奨。不足分をコンビニ氷で補うのは、コスト的にも品質的にも避けたい。

35kgタイプで約20万〜28万円、75kgタイプで約40万〜45万円が目安。居酒屋の場合は迷ったら大きい方を選んでください。

⑥ ビールサーバー|実は「買わなくていい」機器

居酒屋の売上の柱である生ビール。ビールサーバーは高額な機器ですが、実は自分で購入する必要がないケースがほとんどです。

アサヒ・キリン・サントリー・サッポロなどの大手ビールメーカーは、自社ビールの仕入れ契約を結ぶことで、ビールサーバーを無償で貸与してくれます。設置・メンテナンスもメーカーが対応するため、開業者の負担はほぼゼロ。開業前に酒販店(酒屋)を通じてメーカーに相談するのが一般的な流れです。

ここに投資する必要がない分、他の機器に予算を回しましょう。

⑦ 食器洗浄機|居酒屋では「必須」に近い

居酒屋はメニューの品数が多い分、使う食器の種類も量も多い業態です。小皿、中皿、焼き物皿、グラス、ジョッキ。30席の居酒屋がフル回転すると、1時間で100点以上の食器が出ます。手洗いでは到底追いつきません。

アンダーカウンタータイプで約15万〜30万円。人件費1人分と考えれば、数ヶ月で回収できる投資です。



メニュー構成で「いる機器・いらない機器」を判断する

居酒屋の厨房機器で最も大切な考え方は、「メニューに合わせて機器を選ぶ」のであって、「機器に合わせてメニューを作る」のではないということです。ここを間違えると、使わない機器に数十万円を費やすことになります。

メニュー構成の特徴 必要な機器 後回しでいい機器
刺身・海鮮が主力 冷蔵庫を大きめに。ネタケース。 フライヤーは卓上で十分
焼き鳥・串焼きが主力 焼き物器(グリラー)は本格機を フライヤーは後からでも追加可
揚げ物・唐揚げが主力 据置型フライヤーは必須。冷凍庫を大きめに グリラーは不要
創作料理・おつまみ中心 ガスレンジの口数を多めに。コールドテーブルを広く 専用機器より汎用機器を優先

「自分の店はどのタイプか」を決めてから機器を選ぶと、不要な出費を避けられます。



新品・中古・リース|居酒屋の場合の使い分け

居酒屋は機器の種類が多いため、すべて新品で揃えると総額が大きくなります。使い分けがとても重要です。

調達方法 向いている機器 理由
新品 製氷機・冷蔵庫・冷凍庫・コールドテーブル 故障が営業停止に直結する冷機系は新品が鉄則
中古 ガスレンジ・フライヤー・焼き物器・作業台・シンク・棚 構造がシンプルで壊れにくく、中古でも性能差がほとんどない
リース 食器洗浄機 高額だが代替が難しく、リースなら月額で負担を分散
メーカー貸与 ビールサーバー 仕入れ契約で無償貸与が一般的

居酒屋は機器の種類が多い分、この使い分けによるコスト圧縮効果がどの業態よりも大きいです。



費用シミュレーション|20坪・30席の居酒屋モデル

刺身・焼き物・揚げ物を一通り提供する、20坪・30席のスタンダードな居酒屋を想定します。

【パターンA】すべて新品でそろえた場合

機器 想定スペック 価格目安
ガスレンジ 2口 オーブン付き 130,000円
ガスフライヤー 据置型1槽 200,000円
焼き物器(グリラー) ガス式卓上 40,000円
コールドテーブル 幅1200mm 冷蔵 180,000円
業務用冷蔵庫 縦型2ドア 200,000円
業務用冷凍庫 縦型2ドア 220,000円
製氷機 日産45kg 320,000円
食器洗浄機 アンダーカウンター 200,000円
作業台・シンク類 一式 100,000円
ビールサーバー メーカー貸与 0円
合計(目安) 約159万円

【パターンB】新品+中古+リース+貸与を使い分けた場合

機器 調達方法 価格目安
ガスレンジ 中古 50,000円
ガスフライヤー 中古 80,000円
焼き物器(グリラー) 中古 15,000円
コールドテーブル 新品 180,000円
業務用冷蔵庫 新品 200,000円
業務用冷凍庫 新品 220,000円
製氷機 新品 320,000円
食器洗浄機 リース(月額1.5万円) 初期0円
作業台・シンク類 中古 40,000円
ビールサーバー メーカー貸与 0円
合計(初期費用) 約111万円

使い分けることで、初期費用を約48万円圧縮できます。差額分を運転資金に回せば、開業後の資金繰りに余裕が生まれます。

「自分の居酒屋ではどの構成でいくらになるか」をもっと具体的に知りたい方は、当サイトの厨房機器シミュレーターをお試しください。



居酒屋ならではの注意点

ドリンクの動線を甘く見ない

居酒屋は料理だけでなくドリンクの提供頻度が非常に高い業態です。製氷機→グラス→ドリンク提供口までの動線を短くしないと、ドリンクの提供が遅れて客単価が下がります。製氷機の設置場所は、厨房のレイアウトを考える際に最初に決めるべきです。

食品衛生法の「2槽シンク」に注意

飲食店の営業許可を取るためには、保健所が定める基準を満たす必要があります。多くの自治体で「2槽以上のシンク」が求められます。シンクの数やサイズは自治体によって異なるため、物件契約前に管轄の保健所に確認してください。

居抜き物件は「お得」とは限らない

前の居酒屋の設備をそのまま引き継ぐ「居抜き物件」は初期費用を大きく抑えられますが、残っている機器が古すぎて開業後すぐ故障するというリスクがあります。特に冷蔵庫と製氷機は、製造年から8〜10年を超えていたら新品に入れ替えたほうが安全です。「安く入れたけど修理代で結局高くついた」という失敗は非常に多いです。



まとめ|居酒屋の厨房は「メニューから逆算」して決める

居酒屋の厨房機器選びで押さえるべきポイントを改めて整理します。

  • メニュー構成を先に決め、そこから逆算して機器を選ぶ:「何でも作れるように」と全部揃えると初期費用が膨らみます。
  • 製氷機は居酒屋が最も消費する業態:迷ったら大きいサイズを。氷切れはドリンク売上に直結します。
  • 冷機系(冷蔵庫・冷凍庫・製氷機)は新品、加熱系(レンジ・フライヤー)は中古が賢い:この使い分けで50万円近い差が出ます。
  • ビールサーバーはメーカー貸与が一般的:ここに投資する必要はありません。

居酒屋は「何でも出す」が求められるからこそ、厨房機器は「全部揃える」のではなく「メニューに合わせて絞る」ことが成功の鍵です。

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